生活保護を受給したままでも相続登記で名義変更できる要件とは

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司法書士さいとう司法書士事務所
青森市大野でさいとう司法書士事務所を経営している代表齋藤洋介です。 相続を中心として業務を行っています。 趣味は自転車(ロードバイク)、青森市内のラーメン店巡り、司馬遼太郎の小説を読むことです。
生活保護と相続登記

一般的なイメージですが、生活保護を受給している人はアパート暮らしで持ち家はもてないと考えているかたも多いとは思います。

ですから、もし生活保護受給者が不動産を相続しても、不動産は半ば強制的に売却しないといけないと考えがちです。かくいう私自身もそのように考えておりました。

しかし、くわしく調べてみると意外とそうでもないことがわかりました。そこで生活保護を受給しながらでも不動産を相続できるケースをご紹介しますので、ご参考にしてみてください。

相続登記で名義変更をすると

亡くなった親の名義のままでその家土地に何年も住み続けている人はわりといます。名義変更しなくても罰則はないし、日常生活に不便もないからです。

しかし、そのままでは自分の家、つまり、「この不動産は私の所有物です。」と対外的に主張することはできません。

そこで遺産分割協議などをして名義を親から自分に変えるのですが、生活保護を受給しながら名義変更をしてもよいのか?あるいは名義変更後に生活保護を受給できるのかが問題になります。

 

生活保護における資産活用

生活保護法第4条第1項には次のように書かれています。

生活保護法第4条第1項

保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。

これは生活保護を受けるための要件です。

つまり、簡単言うと

多少なりとも働くことができるのであれば働きましょう。それでも最低限度の生活の維持できなければ、その分は生活保護として支給します、ということであり、

また、最低限度の生活水準を超えるような資産を持っているならば、それらは売却して生活費にまわしましょう。

という要件です。

これを補足性の原理といいます。

ですから、高級腕時計なんかを所有していたら、それは売却しましょうとか、不動産を持っていたら、それも売りましょうという話になるのです。

もちろん相続登記による名義変更で不動産を相続することになったら、その家も売却して生活費にまわさないといけないという結論になるわけです。

以上が原則です。

 

生活保護における資産活用の例外

しかし、原則があれば例外もあります。もちろん補足性の原理にも例外があります。

資産を売らないほうがいいケースもあるからです。

たとえば次のようなことが挙げられます。

  • 売却するよりも受給者が活用したほうが生活の維持と自立の助長に役立つ
  • そもそも処分することができない、または、処分が難しい
  • 売却代金よりも売却に要する経費がかさむ
  • 社会通念上処分させることが適当ではないもの

などです。

これらのケースに当てはまれば、資産を売却する必要はないかもしれないのです。

 

生活保護における資産活用と不動産

もちろん、生活保護受給者が不動産を所有している場合は、原則、不動産は売却しないといけません。

しかし、不動産の資産活用についても例外があります。

宅地

生活保護受給者が居住している家屋が建っている土地の場合、保有が認められる可能性があります。

生活保護費を支給する自治体からみれば、そのまま暮らしてもらったほうが、アパートに暮らしてもらうよりも賃料が浮くからです。

ただし、売りに出したら値がつくような土地の場合は売却しないといけません。

また、保有が認められる場合でも不動産担保型生活資金(リバースモーゲージ)が利用可能ならば、リバースモーゲージを活用しないといけません。

家屋

家屋も同様に保有が認められる可能性はあります。

ただし、処分価値が利用価値に比べて著しく大きいと認められません。土地と同じく売りに出したら値がつく場合です。

また、家が余っているからと言って貸家にすることはできませんし、リバースモーゲージを活用しないといけないこともあります。

不動産担保型生活資金(リバースモーゲージ)とは

不動産担保型生活資金とは、不動産を担保にして生活費用を金融機関から借りることをいいます。

もちろん、資金を返す当てはないので、最後には不動産を売却してそれで清算することになります。

つまり、仮に生活保護を受けたまま自分の家に住み続けていたとしても最終的には家を手放すことになります。

田畑

生活保護を受ける世帯が農業に従事している場合、田畑の所有が認められるかという問題です。

これも認められる可能性はあります。

農業に従事することにより収入があれば、資産の活用といえるからです。

ただし、従事している人員からみて、農地が多すぎる場合などは所有が認められない可能性もあります。

山林及び原野

これらも農地と同じく事業として使用している場合は保有が認められる可能性があります。

 

注意点

家屋や宅地などが生活保護を受けながらでも所有できる可能性について書いてきましたが、

これらは、以下の文書をベースにしております。

  • 生活保護法による保護の実施要領について(昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生省事務次官通知)
  • 生活保護法による保護の実施要領について(昭和38年4月1日厚生省発社第246号厚生省社会局長通知)
  • 生活保護法による保護の実施要領の取り扱いについて(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知)

以上は各自治体に生活保護実施の基準について通知したものです。あくまで基準であり、各自治体で取り扱いは異なります。

ですから、もしお悩みのかたがいらしたら、まずは最寄りの福祉事務所にお問い合わせください。

 

 

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