成年後見と遺産分割
saitou
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遺産をだれがどれだけ取得するかを決めるには相続人全員の同意が必要です。
だれかひとりが欠けてもダメです。成立しません。
もちろん、お互いが納得してから同意という流れになるので、
相続人全員にちゃんと判断能力がある、たとえば、
「遺産が大体どれぐらいあって」
「誰が不動産を取得して、預金は法定相続分で分ける」
といった遺産分割の内容を理解しているという大前提があります。
しかし、認知症などで判断能力、事理弁識能力が落ちて、
相続人のひとりが遺産分割の決め事を理解できないこともあります。
このとき、遺産分割協議書に誰かが代筆して、本人の実印を押印すれば、
見た目、遺産分割協議は成立したように見えます。
しかし、こういった遺産分割協議は無効です。
ですので、判断能力が落ちた相続人の代理人を成年後見制度を利用して立てることになります。
前置きが長くなりました。
今回は成年後見制度を利用した遺産分割について書き残しておこうと思います。
遺産分割をするにあたって、成年後見人の申立を家庭裁判所にしますが、
まず、ひとつの問題点として、だれが相続人の成年後見人になれるかという点があります。
もちろん、相続人でなければ身内を候補として立てることもできます。
身内であれば気心も知れているし、遺産分割もやりやすいです。
しかし、必ずしも身内が選任されるとはかぎりません。
こういった場合では、スポットで弁護士、司法書士といった専門職が選任されることが多いようです。
遺産分割が終わった後に、専門職後見人が辞任して、そのあとに身内が後見人に就職するという流れです。
私もこのパターンを何度か経験しました。
専門職が後見人に就くということは専門職に対して報酬が発生します。
どれぐらいの額になるのかは、事案の複雑さや資産規模により異なるので明確には言えませんが、
家庭裁判所が額を決定します。
以上が、成年後見を利用した場合の面倒な点です。
しかも、もう一点、面倒なことがあります。
遺産分割にあたって、成年後見人が就いている相続人の法定相続分は確保しないといけないという縛りです。
というのも、成年後見制度はそもそも被後見人の利益を守るためにあるからです。
たとえば、相続人のひとりが不動産を相続するとなっても、
成年後見人が就いている相続人に代償金を支払う必要が出てくるかもしれないのです。
ただ、必ずしも代償金を支払わないといけないということでもないようです。
というのも、金銭の遺産分割でしたら、ほぼ必ず利益確保という話になると思いますが、
不動産だと空き家で解体する予定だという場合だと、かえって相続しないほうが本人の利益につながるからです。
こういうケースだと代償金は払わなくてもよさそうです。
以上、長々と書いてきましたが、
一言で言ってしまうと成年後見を使うと遺産分割は少し面倒になるということです。
こういった成年後見制度の面倒さから、制度を変えていこうという動きもあるようです。
変化がありましたら、随時、ブログでご紹介していこうと思います。