意思決定支援の難しさ
saitou
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現在の成年後見制度は、本人のために成年後見人が代理として意思決定をする制度設計となっています。
いわゆる代行決定です。しかし、近年、本人の意思を尊重すべきという考えから、
代行決定は最後の選択肢に残して、
後見人はできるだけ本人の意思決定を支援するにとどめる、という流れになっています。
というのも、本人が自身の障害により意思決定ができないというのは、本人に原因があるのではなく、
社会の側に原因があるので、障害を取り除く責任は社会にあるからです。
しかし、意思決定支援とひとくちに言っても難しいものです。
たとえば、認知症の本人がコーヒーを飲みたいという要望を言ったとして、
市販のドリップコーヒーを提供したとしてもそれが本人が本当に望んだコーヒーとはかぎりません。
本人が望んでいたことは、喫茶店で新聞を読みつつコーヒーをたしなみ、自分の時間を楽しみたい。
というのが本音かもしれません。
コミュニケーションで本人の真意をはかるのは、難しいです。
言っても伝わらないというあきらめ。
わがままととられるのではないかというおそれ。
お世話になっているという感情から気持ちを抑えてしまう。
といった理由により、本人からの真意はなかなか出にくいものです。
また、本人を取り巻く、ケアマネ、サービス提供者、後見人といった専門家も
本人の希望を実現するさいの障害になりかねません。
なぜなら、先ほどのコーヒーの例で言うと、専門家からの立場では、
喫茶店にひとりで行かせるのは危険だから、自宅でコーヒーをドリップして飲んでほしい、
という決定に傾くかもしれません。これでは本人の利益を損なっています。
しかし、専門家は安心、安全を考慮してむしろ利益を最大限に重視しています。
意思決定支援では、本人と専門家の考えが対立してしまうことがあります。
専門家は本人にとっての生活の安全、安心を重視しがちですが、
本人にとっては、最適な選択とはならないからです。
この対立をどのように解消していけばいいでしょうか。
それには、後見人や他の専門家がそれぞれ孤立して、本人と向き合うのではなく、
チームを編成して課題に取り組むことが重要です。
多方面から本人の人となり、歴史を見つめ、共有すれば、
ひとりの専門家が向き合うよりも、ずっと奥行きのある本人の真意をとらえることが可能でしょう。
また、チームには本人も含めるべきです。
専門家だけのチームでは、専門家にとっての安心な選択が選ばれるかもしれないからです。
本人もチームにいることで、本人の意を汲んだ決定が可能となります。