任意後見と民事信託を組み合わせて問題を解決する
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成年後見制度には、法定後見と任意後見があります。
しかし、制度としては法定後見の利用が大半であり、任意後見はあまり利用されておりません。
原因として制度的に使いにくいなど様々な理由があるかと思いますが、
任意後見と民事信託を組み合わせることで、
法定後見ではなし得ない問題解決を図ることが可能となります。
問題1 引きこもりの息子の将来
相談者はアパートを所有しているが、高齢であり意思能力が衰えに不安がある。
息子が2人いるが、ひとりは引きこもりである。
自分の死後、引きこもりの息子の生活も不安だ。
このケースでは、相談者と司法書士が任意後見を締結し、
将来、相談者が衰えたら司法書士が身上保護、財産管理をする。
また、アパートを信託財産として、委任者を相談者、
受託者を引きこもりではない息子とした信託契約を締結します。
家賃収入を受益権として相談者が取得し、
相談者の死後は引きこもりの息子が取得する内容とします。
ポイントは、相談者の死後も引きこもりの息子の生活を保障できる点です。
法定後見では何ら障害のない人を後見することはできません。
民事信託では、以上のスキームで解決が可能です。
問題2 事業承継
相談者は会社を経営しているが、息子に先立たれてしまった。
孫はまだ幼い。
自分自身の老後と会社の将来が心配だ。
このケースでも、まず相談者と司法書士が任意後見契約を締結します。
そのうえで、信託契約を締結しますが、
信託財産は会社の株式及び会社所有不動産とします。
こうすることで、実質的に会社の経営自体を信託することが可能です。
頭を悩ますのは、だれを受託者とするかですが、
最も信頼おける従業員を役員に迎い入れて、
その人を受託者とするのが現実的です。
信託監督人は司法書士とし、経営が適正に行われているかをチェックします。
受益者は相談者、相談者の死後は孫を受益者とします。
また、信託に期限を設けておきましょう。
孫が成人し経営できるようになるまでです。
以上のスキームで、
相談者が衰えたら、後見人である司法書士が経営をチェックでき、
なおかつ、死後も信託契約により相談者の意思を反映することが可能です。
法定後見では、被後見人一代限りの関与となりますが、
任意後見に信託契約も取り入れることで柔軟な問題解決が可能です。
しかし、注意点もあります。
信託契約は何十年という長期にわたることも考えられます。
当初の受託者も何らかの事情で信託契約を履行できなくなる可能性もありえます。
そこで、受託者の後継も事前に決めておくことが望ましいです。