親亡き後問題を民事信託で対応する
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親である自分が衰えた後、そして親の死後に障害のある子供を見てくれる人がいない。
いわゆる親亡き後問題ですが、民事信託を利用してどこまでフォローできるのか、
事例を通して考えてみたいと思います。
事例
相談者Xには障害のある子供Yがおり、現在は相談者Xが生活の世話をしている。
しかし、Xも高齢となり、衰えを感じてきていることから、今後のYのことが心配だ。
また、配偶者は数年前に他界している。
財産は不動産(アパート一棟あり)と現金預金のみ。
この先、どのような対策をとればいいのでしょうか。
成年後見制度の利用
真っ先に考えられるのは、子供Yのために成年後見の申立をすることです。
今後は、相談者Xに代わり成年後見人が財産管理、身上監護をしていきます。
また、子供Yに施設入所を考えてもらうこともいいかもしれません。
その際には、施設に入所すると決める判断はYにとって心理的負担となるので、
十分に留意することが必要だと思われます。
成年後見ではカバーできない問題
成年後見人が就任することにより子供Yをバックアップできるとしても、
まだ問題が残っています。
相談者Xの財産の行方です。
親族関係図を見れば明らかですが、相続人は子供Yのみです。
子供Yが相続した後、Yの相続人は存在しないので、
相続人不存在となり、最終的に国庫に帰属してしまいます。
Yに遺言を作成してもらい、
たとえば入所した施設に遺贈するという形にしておけばいいのですが、
はたして障害のあるYに遺言を作成する能力があるのかという問題があります。
子供Yの遺言に関する意思決定能力を評価することはなかなか難しいでしょう。
民事信託で成年後見を補完する
成年後見では解決できない問題を民事信託で解決することが可能です。
相談者Xが元気なうちに信託契約を締結し、
アパートなどの不動産や金銭を信託します。
委託者はXで受託者は信頼できる人、たとえば、いとこなどにお願いします。
受益者もX、Xの死亡後は子供Yです。整理すると以下のとおりです。
- 委託者 相談者X
- 受託者 いとこ
- 受益者 相談者X
- 第二次受益者 子供Y
- 帰属権利者 福祉施設
当初、家賃収入は相談者Xが取得しますが、Xの死亡後はYが取得します。
また、信託の終了はXとYが亡くなった時としておき、
委託者の地位は相続しないようにしておきます。
信託終了後に財産は福祉施設に帰属します。
このように民事信託を利用すれば、
成年後見と遺言では解決できない問題を解決することができます。