民事信託で元妻への離婚給付
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離婚の際に親権を持つ配偶者が財産分与として自宅不動産を取得することがありますが、
配偶者の財産管理に不安があったり、
不動産を取得したら、すぐに売却してしまうのではないかといった不安がある時に
民事信託でそれらの不安を解消する手立てを事例を通して考えてみます。
【参考文献 民事信託の実務と信託契約書例】
事例
AはBとの間に子供Cがいるが、離婚して親権は元妻Bが持つことになった。
Aは事業をしており、経営が順調なうちに子供Cが大学を卒業するまでの養育費を一括で渡し、
また自宅不動産も渡したいのだが、
浪費癖のある元妻Bが養育費を費消してしまわないか、
不動産をすぐに売却してしまわないかが不安がある。
スキーム図
スキーム自体は単純であり、
委託者は夫Aであり、受益者を妻Bとします。受託者はAが信頼できる者にしましょう。
信託財産は養育費(一括分)と自宅不動産です。
信託目的は、散財を防ぎ、子供が健全に生活できることです。
妻Bに養育費と財産分与としての自宅不動産を夫Aが直接に渡すことはせずに
受益権という形で渡します。
受託者は受益者であるBに適切に金銭を支給します。
こうすることで、元妻Bが財産を費消してしまうのではないかという、
Aの不安を解消することができます。
信託の期限は、子供Cが大学を卒業するまでとします。
民事信託の倒産隔離機能
さて、夫Aは会社を経営しています。
現在、経営は順調ですが将来、何が起きるかわかりません。
経営者は会社の保証人となっていることも多いです。
会社が傾いたら、信託した養育費と不動産はどうなるのでしょうか。
信託法第23条第1項により、
信託された財産を強制執行、仮差押、仮処分、競売、国税滞納処分ができない、
となっています。
また、受託者が破産手続き開始の決定を受けたとしても、信託法第25条1項により、
信託された財産は、破産財団に属しないことになっています。
つまり、委託者、受託者の経済状況が悪くなっても、
信託財産は影響を受けないということになります。
民事信託と贈与税
今回の事例で税務として問題となるのは、
まず、夫Aから妻Cへの自宅不動産の財産分与です。
受益権として分与されますが、
相続税法基本通達9-8により、
こちらには贈与税は課されないとされています。
もうひとつ、養育費の一括払いですが、
子供の生活にために使われるのであれば、非課税財産として、
贈与税はかからないとされています。
よって、この事例では贈与税は特に考慮する必要はないようです。