民事信託で後継ぎ遺贈を実現する

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司法書士さいとう司法書士事務所
青森市大野でさいとう司法書士事務所を経営している代表齋藤洋介です。 相続を中心として業務を行っています。 趣味は自転車(ロードバイク)、青森市内のラーメン店巡り、司馬遼太郎の小説を読むことです。

成年後見や遺言では対応できない問題を民事信託を使えば解決することができます。

事例を通して民事信託を利用した後継ぎ遺贈について考えてみたいと思います。

(参考文献 民事信託の実務と信託契約書例)

事例

 

親族関係

相談者Xには亡くなった亡妻の間に長男Bがいます。

Aと再婚しましたが、Aとの間には子はいません。

相談者Xは自分が死んだ後は、後妻Aに自宅不動産を利用してほしいが、

後妻Aの死後は自宅を長男Bに取得してほしい。

AとBは仲が良くなく、養子縁組はしていない。

問題点

相談者Xの希望どおりにするには、まず遺言の利用が考えられます。

Xの死後に後妻Aが自宅を相続し、後妻Aが遺言で長男Bに自宅を遺贈すればいいのですが、

Aが仲の悪いBに遺贈するのかが不安です。

逆に負担付き遺贈でBに自宅を相続させる代わりに

Aの存命中は自宅をAに利用させる、という方法もあります。

しかし、同じくBが約束を守るのかは定かではありません。

遺言では、Aが相続した後にBに相続させるといった後継ぎ遺贈ができないので、

このような問題がおきます。

民事信託を利用

民事信託では、遺言では不可能な後継ぎ遺贈を受益者連続型として設定できます。

スキーム

 

まず、委託者はXです。Xの自宅不動産は受託者に信託します。

当初の受益者は相談者Xです。

信託の登記をして不動産の名義人は受託者に移しますが、XとAはそのまま住み続けます。

第二次受益者は後妻Aです。

Aは相談者Xが死亡後に受益者となり、そのまま住み続けます。

帰属権利者は長男Bです。

XとAが死亡後に信託契約は終了して、Bに不動産の所有権は移転します。

このスキームで民事信託を活用することで、

相談者Xの希望を実現できます。

信託契約のポイント

このスキームで信託を組成する場合、

XとAの死亡で信託契約は終了するので、委託者の地位は相続しないと定めておきます。

また、受託者は信託目的の範囲内であれば、

不動産を処分したり、抵当権を設定することも可能ですが、

最後は長男Bに渡すのが目的ですので、

受託者が処分できないように制限を定めておきます。

信託法91条

受益者が連続する信託では、信託法91条に注意です。

信託法91条では、信託が設定されてから30年を経過すると、

1度しか受益者を交代できないと定められています。

今回のスキームでは、XからAと一度しか受益者は交代しませんので、

あまり問題にはならないかと思います。

問題点

このスキームの問題点は、だれを受託者とするかです。

長期に渡るので、受託者も複数立てておいた方がいいかもしれません。

当初の受託者が死亡したら、信託会社につなぐということが考えられます。