相続登記で相続人の戸籍が樺太にある場合
saitou
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前回、被相続人の本籍が樺太にあった場合の相続登記について書き残しましたが、
今回は、相続人の戸籍が本籍がある場合について、
私の相続登記の経験をもとに書き残しておこうと思います。
なお、あくまでもひとつの事例であり、
このケースがほかにも同じように当てはまるとは限りませんので、ご注意ください。
相続人が樺太に転籍した!
相続登記に必要な戸籍は、被相続人は出生から死亡までの一連の除籍、原戸籍謄本となりますが、
相続人に関しては現在戸籍が一部あれば足ります、
今回の事案では、相続人のひとりが結婚を機に樺太に転籍して、
以後、連絡が途絶えていました。
ちなみに、該当の相続人は昭和一桁生まれで、
樺太に転籍したのは昭和23年ごろです。
仮に現在でも本人または本人の相続人と連絡がつくのであれば、
死亡していたとしても、なんなく相続登記は完了できるケースです。
しかし、連絡がとれないために
相続人全員がそろわず、遺産分割協議が成立しないので、
このたびの事案では家庭裁判所に代理人の選任申立をしました。
不在者財産管理人の選任申立
樺太に転籍した相続人が、現在も生きていればだいたい90歳ぐらい。
十分にご生存している可能性があります。
そこで、家庭裁判所に該当相続人の代理人となる不在者財産管理人の選任申立をしました。
ちなみに管理人には私を選任してくださるように申立ました。
結果、無事に選任されて、今後は私が代わりに遺産分割協議をすることと相成りました。
なお、不在者財産管理人に誰を選任するかについては家庭裁判所が決めるので、
必ずしも希望どおりの人が選任されるとは限りません。
また、申立の際に予納金を裁判所に納める必要があるので、ご注意ください。
予納金の額は事案によって異なります。
帰来時弁済型遺産分割協議書
さて、不在者財産管理人の選任では厄介なことがあります。
というのも、管理人は相続人の利益を保護するために選任されていますので、
相続人の法定相続分を確保することが求められるのです。
実務上、遺産分割協議で不動産の名義変更をする際には、
だれか1人が不動産を取得するという内容がほとんどです。
しかし、不在者財産管理人が選任された場合、
不在者の相続分が無視された遺産分割協は原則認められないのです。
ですので、このようなケースでは遺産分割協議書に
不在者の相続人と連絡がとれるようになったら、
不動産を取得した相続人が法定相続分の金銭を渡す
といった内容を加えておきます。
こうすることで、遺産分割協議書が家庭裁判所の許可もおり、
相続登記も完了します。