相続登記の後に休眠抵当権抹消
saitou
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だいぶ前にになりますが、相続登記の後に休眠抵当権の抹消登記をしましたので、
思い出しながら書き残していきたいと思います。
そもそも休眠担保権とは
登記簿上に残っている抵当権は、債務を返済したからといって自動的に消えるものではなく、
あらためて不動産所有者と抵当権者が共同で抵当権抹消登記を申請することにより、
登記簿から除かれます。
普通は、債務者が弁済後に抵当権抹消もするのですが、
逆に抹消登記をしないでいると明治、大正の抵当権でも残ってしまいます。
ざっくりと言ってしまうと休眠担保権はこのズルズルと現在まで残ってしまったものをいいます。
大昔の抵当権ですから、抵当権者とも連絡がつかないこともおおく、
通常のやり方ではまず抹消はできません。
ですから、特別に認められた手続きにより抹消申請をすることになります。
今回は不動産登記法第142条第3項後段の規定に従い、
下記の問題の休眠抵当権を抹消することができました。
問題の休眠抵当権の中身
抵当権は以下のようなものでした。
- 債権額 金100円
- 弁済期 明治41年8月31日
- 利息 1割5分
- 損害金の定め なし
現在の物価からみるとたったの金100円ですが、
当時では、ある程度はまとまったお金だったと思います。
利息は15パーセントですから、消費者金融よりも安いぐらいでしょうか。
債権者の名前と住所も登記簿から確認できますが、
ずいぶんと古風な名前と聞いたこともないような住所が記載されていました。
もちろん、相続により新たに取得した方と抵当権者には面識はありません。
休眠抵当権抹消の必要書類
不動産登記法第142条第3項後段を利用した場合の必要書類は以下のとおりです。
登記義務者の行方不明を証する書面
ここで登記義務者は債権者のことになります。
具体的に使える書面はいろいろあるのですが、
今回は配達証明郵便による受領催告書を準備しました。
借金を全部払いますので連絡をくださいといった内容のはがきを債権者に郵送します。
しかし、もちろん、はがきは債権者には届かないので、
「あてどころに尋ねなし」で返送されます。
この返送されたはがきが行方不明を証することになります。
債権の弁済期を証する書面
債権の弁済期を証する書面には不動産の登記事項証明書を添付すればよいです。
ちなみに閉鎖された昔の登記事項証明書には弁済期も記載されています。
債権、利息及び損害金の全額を供託した書面
当たり前ですが、借りた金は返さないと休眠抵当権と言えども抹消はできません。
ただし、債権者は行方不明なので供託所に全額を供託することで、
返したということになります。
明治から現在までの利息及び遅延損害金も含めてです。
ちなみに、今回の事案では1700円ほどでした。
休眠抵当権抹消は司法書士に頼む必要はあるのか
簡単な抵当権抹消であれば、わざわざ司法書士に依頼しなくても、
自分でもできるかもしれません。
しかし、休眠抵当権の場合、
- 休眠抵当権の要件が難しい
- 供託額の計算が面倒
- 法務局だけでなく供託も必要である
といった理由により、司法書士以外の方には難しいと思います。
ですので、もし休眠抵当権だと思われる昔の抵当権が残ってお困りの方は、
ぜひ司法書士への依頼をご検討してみてください。