遺言書とは異なる割合で遺産分割協議書を作成するには
saitou
最新記事 by saitou (全て見る)
- 代表取締役の住所を非表示にできるようになりました。 - 2024年12月6日
- 外国人のローマ字氏名が併記されるようになりました。 - 2024年12月5日
- 被相続人の住所がつながらない場合の通達 - 2024年11月26日
被相続人が遺言書を残していたら、その遺言書どおりに遺産を分割するケースがほとんどだと思います。
しかし、何らかの事情で遺言書どおりに遺産分割できないこともあり得るかと思います。
そこで、遺言書はあるけれどもそれとは異なる割合で遺産分割協議をしてもいいのかがここでのテーマになります。
遺言とは異なる割合で遺産分割をする要件
遺言書とは異なる割合で遺産分割をするには要件があります。その要件とは以下のとおりです。
- 相続人全員の同意がある
- 遺言執行者の了承を得ている
- 遺言者が異なる割合での遺産分割を禁じていない
- 受遺者の了承を得ている
これらの要件を満たしているときは遺産分割が可能だといわれています。以下、各要件を詳しく掘り下げてみましょう。
相続人全員の同意
ほとんどの場合、遺言が残されていたら、遺言者の意思を尊重するために遺言どおりに遺産を分割することがほとんどだと思います。
しかし、遺言書が書かれた当時と現在では事情がおおきく変わったということも考えられます。
かりに遺言書どおりに遺産分割をしたとしても、その後に分割された遺産を相続人間で贈与することはなんの問題もありません。
たとえば、ある相続人が不動産を相続した後にその不動産を他の相続人に贈与してもいいわけです。
そうであるならば、わざわざ遺言に書いてある割合で分割した後に贈与をすると二度手間になるので、
はじめから遺言どおりではなく他の相続人に不動産を相続させたほうが効率的です。
つまり、相続人全員の同意があるならば、はじめから遺言とは異なる分割をしてもいいわけです。
遺言執行者の了承を得ている
遺言執行者とは遺言に書かれている内容を実現するのが役目の人です。
不動産の登記手続きをしたり、銀行預金の解約手続きを実際にすることになります。
たいがいは相続人のうちのひとりが遺言書に指定されていますが、事情があったり、財産が多額なときは弁護士といったまったくの部外者が指定されることもあります。
遺言執行者が指定されている場合には、相続人は遺言執行者の邪魔をしてはいけません。
このことは民法第1013条に明記されています。
民法第1013条
遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることはできない
ですから、相続人が勝手に遺産を再分割などして不動産の名義変更をしてしまったとしても、それは無効になります。
しかし、遺言執行者の了承を得ていれば、妨げる行為とはいえなくなるので、遺言とは異なる再分割はできると考えられています。
遺言者が異なる割合での遺産分割を禁じていない
遺言者がそもそも遺言とは異なる割合での遺産分割を禁じていることがあります。
民法第907条一項に書かれています。
民法第907条一項
共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
このように規定されいるために遺言者の意思を最大限に尊重するという意味でも禁じられている場合はできません。
しかし、逆に言えば禁じていなければ遺産の再分割は可能であり、また、遺言による遺産の分割の禁止には期間がもうけられており、
禁止期間は最大で5年間です。ですから、5年を経過したら遺言で禁じていた場合でも再分割は可能だと考えられます。
受贈者の了承を得ている
遺言者は相続人だけに遺産を相続させるだけではなく、相続人以外にも遺産を遺贈することがあります。
たとえば、遺言者の子の配偶者などはその典型例です。遺言者からみたら子の配偶者は法定の相続人ではありませんが、
遺言者の家業を手伝ってくれた、あるいは介護を献身的にしてくれたとなったら、遺言者の心情として、遺産を取得させたいと思うでしょう。
つまり、相続人以外に利害のある人、受贈者がいることがあるのです。
ちなみに遺贈とは相続人以外の人と遺産を取得させることをいいます。
受贈者は、遺贈を受け取るか、あるいは放棄するか選ぶことができます。放棄をしてくれれば、了承を得たとも言えるでしょう。
ただし、注意点があります。
遺贈には包括遺贈と特定遺贈があり、包括遺贈の場合には放棄に期限があるということです。
包括遺贈とは簡単に言うと、受贈者を相続人と同等に扱うものだとイメージしてください。
特定遺贈は不動産や預金といった特定した財産を受贈者にあげるものです。遺言と言えば特定遺贈のほうが連想されると思います。
期限は受贈者が自分に遺贈があったことを知ってから3か月以内です。その期間内に放棄をしないと受け取ったという意思表示になります。
逆に特定遺贈には期限はなく、10年後でも20年後でも放棄は可能です。
税金も異なってくる
遺言とは異なる割合での遺産分割をすると不動産登記の際に支払う登録免許税や相続税なども変わってきます。
事前に税理士に相談するなりして税金がどれくらいになるのかをあらかじめ把握しておくことも大事です。