数次相続による相続登記には中間省略登記が使えます

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司法書士さいとう司法書士事務所
青森市大野でさいとう司法書士事務所を経営している代表齋藤洋介です。 相続を中心として業務を行っています。 趣味は自転車(ロードバイク)、青森市内のラーメン店巡り、司馬遼太郎の小説を読むことです。
中間省略登記

数次相続による相続登記は手続きに費用と手間がかかります。相続人の数が多くなるのが特徴で戸籍を集めるだけでも一苦労です。

このケースでは中間省略登記をすることで書かなければいけない申請書の数を減らすことができます。

数次相続による相続登記ではよく使われる手法ですので、ぜひ参考にしてみてください。

 

そもそも数次相続とは

昨今、被相続人が亡くなったにもかかわらず相続登記による不動産の名義変更が行われていない不動産が増えており、社会問題となっています。

なかには被相続人の死後50年、60年も経過した不動産もあり、こうなってしまうと相続人たちも面識のない人ばかりになっているでしょう。

この数次相続とは簡単言うと被相続人が亡くなって相続登記を済ませる前にその相続人が亡くなってしまうことをいいます。

これを図にすると以下のようなものです。灰色の人物は亡くなっているとします。

数次相続2

 

父がなくなった時点での父の相続人は、母、兄、妹、弟だけでしたが、相続登記をする前にに兄が亡くなったことにより相続人が変わり、

相続人は、母、妹、弟、嫁、息子、娘となります。4人が6人に増えたわけですから単純に相続人の数が1.5倍に増えた計算です。

このケースでは父が亡くなった時点で一次相続が発生し、その後に兄が亡くなり二次相続が発生しています。

このように相続登記をするまえに二次、三次と次々と相続が発生し、相続人の数が増えていくのが数次相続です。

 

数次相続による相続登記の原則

この数次相続となっている不動産を相続登記により名義変更をするには、一次相続の被相続人から二次相続の相続人に直接、名義を変えることは原則できません。

わかりやすく説明するためにもう一度先ほどの図をご覧ください。

数次相続2

原則からいうと、このケースでは被相続人の父から直接に兄の息子に不動産の名義変更をすることはできません。

まず父から兄に名義変更をして、その後に兄から息子の名義変更をするという流れになります。

ちなみに亡くなった人への名義変更は可能です。

つまり、2回の登記申請が必要になります。もちろん登録免許税もその都度支払わないといけません。

登記簿は不動産の履歴書

このような手間がなぜかかるのかというと、登記簿は不動産の履歴書のようなものだからです。

中学校→高校→大学というのが実際の経歴であるにもかかわらず、中学校→大学と履歴書に記載するのはおかしな話です。

登記簿も同じです。

連続して所有者が並んでないといけないのです。途中で、ある所有者だけをとばすということはできません。

登記は一件ずつが原則です。

 

相続登記で使える中間省略登記

さきほどから「原則」という言葉をなんどか繰り返してきたのは、実はこの原則を曲げることができるからです。

たとえば、祖父(一郎)→息子(二郎)→孫(三郎)と順に相続した場合、祖父から孫へ不動産名義を変更するには、

まず、祖父から息子へ名義を変えて、次に息子から孫へと名義変更する必要があります。

しかし、ある条件を満たせば祖父から直接に孫へと名義変更が可能であり、これを中間省略登記といいます。

一般に相続登記の申請書には登記の原因を書かないといけないのですが、数次相続ではない普通のケースでは不動産の名義人が死亡した日付で「年月日相続」という具合に記載します。

関連記事【相続登記申請書の書き方はこうです!

これが数次相続になるとふたつを無理やりまとめた感じで「年月日二郎相続年月日相続」というように書きます。

つまり、登記簿の原因の欄を見れば数次相続で中間省略登記が使われたということがわかるようになっています。

中間省略登記で相続登記をすれば2回の登記申請が必要なところが1回で済むために手間と費用を節約できます。

 

中間省略登記の要件とは

このように便利な中間省略登記ですが、どんなケースでも使えるわけではありません。

要件があります。それは

中間の相続人が1人だけであるということです。

相続人が2人以上いるときは、「登記簿は不動産の履歴書」という原則に戻って、一件ずつ登記申請をしないといけません。

となると、世の中で相続人が1人しかいないということはまれですので、中間省略登記を使う機会なんてほぼないのではと疑問があるかもしれませんが、

相続人が2人以上いても、遺産分割協議で相続人の1人だけに不動産を相続させると決めたら問題ありません。

また、他の相続人が相続放棄をした結果、相続人が1人になった場合でも使えます。

逆に中間の相続人が1人だけであれば、

次の代の相続人が何人いても中間省略登記は使えます