受託者を一般社団法人とした民事信託

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司法書士さいとう司法書士事務所
青森市大野でさいとう司法書士事務所を経営している代表齋藤洋介です。 相続を中心として業務を行っています。 趣味は自転車(ロードバイク)、青森市内のラーメン店巡り、司馬遼太郎の小説を読むことです。

民事信託を利用すれば、成年後見制度では解決できない問題に対応することが可能です。

そこで、事例を通して民事信託がどのようなケースで有効なのかを考えてみたいと思います。

参考文献【民事信託の実務と信託契約書例 ひまわり信託研究会 弁護士 伊庭 潔 編著】

事例

相談者Xはサラリーマンをしながら、なおかつ大家として多数の不動産を所有している。

相談者は職業柄、転勤が多く不動産の管理がままならない。

Xには息子が3人おり、できれば息子たちに不動産の管理を任せたい。

民事信託を利用して、相談者の希望を仕組み化できないか。

 

民事信託の利用を考える

相談者が委任者として所有する不動産を信託するとして、

受託者をだれにするかが問題となります。

息子のうちのだれかひとりを受託者にしてもいいのですが、

受託者の死亡して新たな受託者が就任しないまま1年間を経過すると、

信託が終了してしまいます。(信託法第163条第3項)

あるいは、息子全員を受託者にしてしまうという手もありますが、

意思決定が煩雑になる可能性も捨てきれません。

また、意見が対立した場合に受託者の業務が停滞してしまうリスクもあります。

そこで、法人を受託者にすればいいのですが、

株式会社の場合、受託者にするには信託業の免許が必要ですから、

株式会社を受託者とするのはほぼ無理です。

そこで、一般社団法人を設立して受託者にすることが考えられます。

 

一般社団法人が受託者となる場合

一般社団法人が業として受託者になることは、株式会社と同様に不可能だと考えられますが、

一度限りであれば、受託者となることは問題ないと思われます。

ですので、民事信託契約を締結するより前に一般社団法人を設立することになります。

一般社団法人には株主の代わりに社員が存在し、

株主総会と同じく社員総会があり、一般社団法人の運営の方針は社員総会の決議によります。

ちなみに社員総会の意思決定は

原則として議決権の過半数が出席して、その過半数をもって行うことになります。

たとえば、社員が息子3人だけの場合、

社員総会に2人が出席して、その2人が議案に賛成すれば可決となります。

このように一般社団法人を設立して受託者とすれば、

意思決定を仕組み化しておくことが可能です。

 

社員間契約

一般社団法人には株式会社の取締役の代わりに代表理事および理事が存在し、

代表理事および理事が業務を執行します。

理事をどのタイミングで選任するかについては、社員間契約を締結することが考えられます。