子供のために自己信託を使う

The following two tabs change content below.

saitou

司法書士さいとう司法書士事務所
青森市大野でさいとう司法書士事務所を経営している代表齋藤洋介です。 相続を中心として業務を行っています。 趣味は自転車(ロードバイク)、青森市内のラーメン店巡り、司馬遼太郎の小説を読むことです。

民事信託を利用すれば、

いままでに成年後見制度を使っても解決できない問題をクリアできます。

事例をとおして、どのような問題に民事信託が効果的なのか考えてみたいと思います。

【参考文献 民事信託の実務と信託契約書例】

課題

相談者Aには息子Bがいるが、Bには軽い障害がある。

Aは事業を営んでおり、好調ないまのうちにBに財産を分けておきたいが、

息子が自身の財産を管理するのには不安がある。

息子の財産を管理するために成年後見を申し立てるという手も考えられるが、

まったくの第三者に財産管理されてしまうのは抵抗があり、

できればBに財産を渡した後も、Bの財産は相談者が管理したい。

また、そもそも障害が軽ければ家庭裁判所の判断で

後見人の選任はできないかもしれない。

なお、相談者の配偶者はすでに亡くなっている。

自己信託を組成する

民事信託で問題となるのは、受託者をだれにするかです。

信託業法で規制されているので、ビジネスとして受託者となれるのは信託会社のみです。

信託会社はある程度の資産がないと信託を引き受けないかもしれないですし、

また、毎年の報酬も発生するため、

実務上、受託者には信用できる身近な人や近親者とすることが多いです。

しかし、適当な人がいない場合、自己信託をするという手もあります。

自己信託では委任者と受託者が同一となります。

今回の事例では、相談者Aが委任者であり、受託者でもあります。

信託ですが、Aがそのまま財産管理をしていきます。

なお、一般の信託とは違い自己信託の効力を発生させるには、

公正証書または公証人の認証をうけた書面で信託契約書を作成するか、

受益者に確定日付のある証書で通知するという決まりがあります。(信託法4条第3項)

自己信託の終了事由

自己信託では、信託行為が終了する事由または終了事由を定めないときにはその旨を記載します。

今回の事例でも信託をどこで終わらせるのかという問題があります。

そもそも、Bのために組成した信託ですから、Bの死亡で信託を終了させるのは当然だと思います。

問題はAがBより先に死亡した場合です。

年の順からいうとAが先に亡くなるのは自然といえます。

ですので、手当としてAが亡くなった後に受託者となる人を指定しておくか、

あるいはAの死亡でも信託を終了させてしまうことも考えられます。

Aの死亡で信託を終了させた後は、

Bのために任意後見契約を締結するか、法定後見の申立をするかが考えられます。