配偶者短期居住権とは? | 相続法が改正されますよ②

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司法書士さいとう司法書士事務所
青森市大野でさいとう司法書士事務所を経営している代表齋藤洋介です。 相続を中心として業務を行っています。 趣味は自転車(ロードバイク)、青森市内のラーメン店巡り、司馬遼太郎の小説を読むことです。

配偶者短期居住権は、配偶者が被相続人名義の住居に無償で住み続けることができる権利になります。期間は最低でも6か月間です。いわゆる使用貸借になりますが、借主が配偶者で、貸主が他の相続人か遺贈で住居を取得した人です。

配偶者短期居住権が新設されました。

配偶者短期居住権

相続法が改正されて、今までよりも配偶者が保護されるようになりました。前回は配偶者居住権について解説しましたが、

関連記事【配偶者居住権とは | 相続法が改正されますよ①

今回は、配偶者短期居住権についてです。

前回の配偶者居住権は賃貸借のようなものであり、相続が始まって遺産分割協議などの話がまとまってから発生する権利ですが、

配偶者短期居住権は、相続が始まって遺産分割協議などで話がまとまるまでの短期間の権利です。

例えば被相続人とその配偶者が、被相続人が所有していた家に住んでいたとします。

被相続人が生前に遺言でその家を配偶者ではない第三者に遺贈したら、配偶者はたちまち住む場所を失ってしまいます。

高齢化社会で、残された配偶者も高齢であることがおおいです。今まで住んでいた家に居られなくなっても、自力でほかの住む場所を確保することはむずかしいでしょう。

実は今まで、こういうケースで配偶者の住む場所を保護するような民法の法律はありませんでした。

もっぱら、裁判上の判例というもので保護されていたのです。

そこで、今回の改正で配偶者短期居住権というカタチで法律で目に見えるようにしました。

 

相続開始から遺産分割終了まで住居は誰の所有?

相続が始まって遺産分割協議などで誰が相続財産を取得するのかを決めるまでの間、相続財産はだれのものなのでしょうか。

ちなみに被相続人はもう亡くなっているので、所有することはできません。

相続財産は一時的に相続人みんなのものということになります。

いわゆる、共有です。

「共有」とは法律上の用語で、共有の財産を処分するには共有している人全員の同意が必要です。

ですから、遺産分割協議までは共有になるので、たとえば相続人の誰かが相続財産の全部を勝手に売ったりすることはできません。

もちろん、今まで住んでいた家も被相続人の持ち家でしたら、これも相続人全員の共有ということになります。

それでは、共有の家に相続人のひとりが勝手に住み続けてもいいのでしょうか?

たとえば、子供が独立してほかに住んでいて、被相続人と配偶者がふたりだけで住んでいたら、

残された配偶者は、遺産分割協議で話がまとまるまでそのまま住み続けてもいいのでしょうか。

他の相続人も共有している以上は離れて暮らしているとはいえ、所有者のひとりです。

「賃料を支払ってください。」と配偶者に言えるのではないのでしょうか。

ということが以前に裁判の場で争われました。

 

平成8年12月17日最高裁判例

相続人のひとりが遺産である住居に相続が始まってからも住んでいたが、ほかの相続人に共有しているのだから賃料に相当する額が払えと主張されました。

しかし、最高裁はこの主張を退けました。というのも訴えられた相続人は長年、家族として同じ住居に暮らしてきたからです。

もっと具体的に言うと相続開始前から被相続人の許諾を得て居住していたら、相続開始後も「無償で使用させる合意があったもの」と推認されるからです。

被相続人は生前は何も言ってなかったが、おそらく、そのまま住み続けてもいいよと言ったはずだということです。

民法上、相続人は被相続人の権利義務を引き継ぎます。

ですから、同居していた相続人と他の相続人の間でも無償で使用する権利義務が続くのです。

この無償で使用する権利義務を法律上の用語で使用貸借といいます。

相続開始から遺産分割が終わるまでの間、同居していた相続人が借主で、他の相続人が貸主という関係になります。

こうすることで、残された配偶者の住む場所を一時的に保護できます。

実際、似たような争いが起きた場合は、この裁判例をもとに解決してきました。

しかし、この裁判例だけで解決するにも限界があります。

まず、無償で使用させる合意があったものと推認されるには、被相続人の許諾を得ている必要があります。

逆に言うと承諾がなかったら推認はされません。

また、この使用貸借はあくまで同居していた相続人と他の相続人の間だけのハナシです。

まったくの第三者、たとえば、遺贈でその家をもらった人に使用貸借は関係ありません。

ですから、第三者に出ていけと言われたら断りようがないのです。

以上のような問題を解決するために配偶者短期居住権ができました。

 

配偶者短期居住権とはどういうものか

さて、やっと本題になりますが、

配偶者短期居住権は、前述した裁判例をベースに欠けている点を補ったものです。

配偶者は、被相続人の所有していた住居に相続が始まった時に無償で住んでいたら、最低でも6か月間はそのまま無償で住み続けることができます。

もっとくわしく言うと

相続開始時点で無償で住んでいたら、住居を相続した他の相続人、または遺贈で取得した人に対して、

遺産分割で住居が誰のものになるか決まるまで、または相続開始から6か月間のどちらか遅い方まで、

住居を取得した人が、配偶者にタダで貸す、つまり、使用貸借になります。

それでは、被相続人の許諾を得ていなかったらどうなるでしょうか?

前述の裁判例では、無償で住むには被相続人の許諾が必要でした。

結論からいうと、被相続人の許諾は必要なくなりました。

被相続人が生前、無償で住むことに反対していたとしても関係なく、配偶者短期居住権は取得できます。

このようにして、配偶者の居住が以前より保護されるようになりました。

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