相続放棄後でも受け取れるもの 未支給年金 遺族年金 生命保険
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相続放棄後でも受け取れるものがあります。おもに未支給年金、遺族年金、生命保険の死亡保険金です。これらについて理由も含めてご紹介しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
未支給年金
年金の支給は2か月に一度、2か月分を後払いとなっています。ですから、被相続人が亡くなるとどうしても未支給年金分が出てしまいます。
例えば、4月15日に支給される年金は2月分と3月分ですが、4月5日に亡くなり死亡届を提出すると、
4月15日には2か月分が支給され、6月15日には4月分も支給されます。この4月分は日割り計算ではなく1か月分として支給されます。(国民年金法18条)
この3か月分が未支給年金となり、相続放棄後も相続人がこれを受け取れるのかが問題となります。
相続放棄後でも未支給年金は売れ取れます
結論から言うと、相続放棄をした後でも未支給年金は受け取ることが可能です。
なぜなら、未支給年金は被相続人の相続財産にはならないからです。
未支給年金は、国民年金法19条1項でだれが受け取れるかがが決められています。
具体的には以下の順で受け取れる人が決まっています。
第1順位 | 配偶者 |
第2順位 | 子 |
第3順位 | 父母 |
第4順位 | 孫 |
第5順位 | 祖父母 |
第6順位 | 兄弟姉妹 |
配偶者がご存命であれば配偶者が、配偶者がすでに亡くなっていれば次順位の子が受け取ることができます。
また、もうひとつの要件もあり被相続人と生計を同一にしたものでないといけません。
このように詳細に決まっているので、国民年金法19条1項の趣旨から考えて、未支給年金は相続人の固有の権利であり、
未支給年金は被相続人の相続財産にはなりません。(最高裁平成7年11月7日判決)
ですから、相続放棄をした後でも相続人は未支給年金を受け取ることができます。
ただし、未支給年金は申請しないと受給できませんのでご注意ください。
遺族年金
遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があり、一家の大黒柱が亡くなった時に残された配偶者と子が受給できます。
生計を同一にしていたなどの一定の要件はありますが、遺族基礎年金は以下の人が受給できます。
- 子のある配偶者
- 子
遺族厚生年金はさらに対象となる人が多くなり、孫や祖父母も受給することができます。
この遺族年金が相続放棄後でも受け取れるのかが問題になります。
遺族年金は相続放棄後でも受け取れます
遺族年金も未支給年金と同じく、相続放棄をした後であっても受け取ることが可能です。
これについても判例があります。
大阪家裁昭和59年4月11日審判(一部)
同法(厚生年金保険法)は相続法とは別個の立場から受給権者と支給方法を定めたものみられ、支給を受けた遺族年金は、固有の権利に基づくもので被相続人の遺産と解することはできない。
つまり、遺族年金は被相続人に支払われるものではなく、遺族に支払われるものですから、遺産にはならないということです。
ですから、たとえ相続放棄をしたとしても遺族年金は受け取ってもよいことになります。
逆に遺族年金を受け取っても相続放棄をすることも可能です。
遺族年金を受給できない場合は死亡一時金を受給することができますが、こちらも相続放棄をしていても受け取ることできます。
生命保険の死亡保険金
生命保険の場合は受取人が誰かによって、相続放棄後でも受け取れるかどうかが変わってきます。
契約書類上の受取人の記載は大体、おおまかに「被相続人」、「相続人」と記載されているか、あるいは配偶者は子が指定されていることがおおいですが、
「被相続人」と記載されている場合は受け取ることができず、それ以外だと受け取ることが可能です。
被相続人と記載されている
受取人が被相続人となっている場合は、死亡保険金は被相続人の財産となります。
ですから、死亡保険金は遺産に含まれます。
このために死亡保険金を受け取ると相続放棄ができなくなり、逆に相続放棄をしてしまうと宇受け取ることができません。
配偶者や子の名前が記載されている
配偶者や子の名前が直接に記載されている場合は、死亡保険金の受取は記載されている方の固有の権利となり、
被相続人の相続財産にはなりませんから、相続放棄後でも受け取ることが可能です。
相続人と記載されている
単に「相続人」とだけ記載されている場合も同様に受け取ることが可能です。
理由は同じく、死亡保険金の受取りは相続人の固有の権利になるからです。