相続登記をしようにも連絡がつかない相続人がいるときの対処法
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遺産分割による相続登記をするには、遺産分割協議書を作成し、相続人全員に実印で押印してもらうことになります。
なにごともなく全員からハンコを押してもらえると問題ありませんが、「連絡がつかない」、「行方不明者がいる」となると、途端に遺産分割協議書作成の難易度があがります。
こういうケースでは以下にご紹介する2つの方法により遺産分割協議書を作成します。
ぜひご参考にしてみてください。
不在者財産管理人と失踪宣告
電話をしてもつながらない、手紙を出しても宛所に尋ねなしで帰ってくる、そもそも何年も連絡をとっていないので所在がわからない。
こういった場合、できるかぎり所在をつかむ努力はしますが、それでも連絡がつかない相続人がいると、いつまでたっても遺産分割協議による相続登記はできません。
まったく困った事態なのですが、そのまま放置しておくとさらに相続人が増えていって事実上、相続登記が困難になります。
そこで、奥の手というか、法律に明記されているので奥の手というわけではありませんが、次の2つの方法を使います。
それは、
- 不在者財産管理人の選任
- 失踪宣告
です。
不在者財産管理人とは行方不明の相続人の代理人のことであり、家庭裁判所に選任してもらうものです。
また、失踪宣告とは行方不明者を戸籍上は死亡の扱いにするというものです。
不在者財産管理人の選任
行方不明の相続人がまだ生きているだろうけど、ただ行方が知らないというケースでは不在者財産管理人を選任することになります。
不在者財産管理人の仕事はその名のとおり、行方不明となっている相続人の財産を適正に管理することです。
ちなみに民法103条に不在者財産管理人の権限、つまり、できることが書いてあり、要約すると以下になります。
- 保存
- 利用
- 改良
行方不明の相続人に不動産があったら、固定資産税を代わりに払ったり(保存)、屋根の雨漏りを修理(改良)したりといったことに権限は限られます。
つまり、財産を維持することが不在者財産管理人の目的で、財産を売るようなこと(処分)はできない、権限外の行為になります。
遺産分割協議書に押印するのも権限外
また、遺産分割協議書に相続人の代わりに不在者財産管理人が自分の実印で押印することも実は権限外です。
ですから、権限外の行為をするためには家庭裁判所の許可をもらう必要があります。
許可をもらって初めて押印することが可能になります。
つまり、まず不在者財産管理人を選任し、そして、遺産分割協議書に判を押すために許可をもらうという2つの手間がかかるわけです。
不在者財産管理人の選任には予納金が必要
家庭裁判所から、不在者財産管理人の選任の際に予納金を納めるようにもとめられることがあります。
この額は資産の規模にもよりますが、だいたい30万円以上になるといわれています。
予納金は、不在者財産管理人の報酬になったり、管理人が職務を遂行するさいの経費に使われます。
遺産分割協議書作成後も辞められない
仮に家庭裁判所の許可をもらい遺産割協議書に判を押し、相続登記もなにごともなく終了したとしても、不在者財産管理人はその職を辞めることはできません。
遺産分割協議書に判を押すのは管理人の仕事の一部にすぎないからです。
その後も不在者財産管理人としての仕事は続きます。
その役目を終えるのは行方不明者となった相続人が戻ってきたか、あるいは死亡したことが分かった時です。
それまで管理人はその職務を遂行するとともに年に一回は家庭裁判所に経過を報告する義務があります。
実務で使われる帰来時弁済型遺産分割協議書とは
不在者財産管理人の選任は予納金の負担があったり、簡単には辞められない面倒さがあるので、
実務では帰来時弁済型遺産分割協議書が作成されることがあります。
これは行方不明となっている相続人が受け取るべき法定相続分を財産を相続した人が預かっておくという文案を遺産分割協議書に盛り込んだものになります。
つまり、いつか行方不明の相続人が現れたら、遺産を相続した人がその法定相続分をお返しするということです。
こうしておけば、選任時に予納金を支払う必要もありませんし、遺産分割協議書作成後に辞めることも可能です。
失踪宣告
相続人が行方不明となりかなりの時間がたっている場合、または大きな災難にみまわれておそらく死んだことが確実な場合は失踪宣告をすることになります。
失踪宣告とは戸籍上、行方不明となった相続人を死亡扱いとする制度です。戸籍の上で死亡となれば遺産分割協議を進めることが可能になるわけです。
ただし、生きているかもしれない人を死亡としてしまう制度ですから、民法第30条にその要件が定められています。
民法第30条には一項と二項があり、それぞれ要件が異なります。
簡単に言うと、
第一項の場合は、行方不明者の生死が7年間明らかではないとき。
第二項の場合は、危難にあって1年間、行方不明者の生死が明らかではないとき。
上記、どちらかの要件を満たせば失踪宣告ができます。
実務では、第一項が使われることが多いと思われますが、注意点がひとつあります。
それはいつの時点で死亡したことになるかということです。これで相続人が変わってくる可能性があるので重要なとこになります。
第一項で死亡扱いとなるのは、7年間が経過した後になります。行方不明となった日ではありません。
令和元年4月1日に行方不明になったとすると、失踪宣告がされるのは令和8年4月2日なります。
失踪時ではなく、期間満了時に死亡となることにご注意ください。
失踪宣告後に行方不明者が現れたら
失踪宣告をして7年の期間満了後に行方不明者がひょっこり戻ってくるということも当然ありえます。
しかし、行方不明者が生きていたことが判明したとしても失踪宣告が自動的に取り消されることはありません。
失踪宣告の取消を申し立てる必要があります。
おそらく遺産分割協議も帰ってきた行方不明者をいれて再度おこなうことになると思われます。
極めてまれなケースではありますが、以上のような筋立てになります。
行方不明の相続人がいる相続登記は専門家でも難しい
司法書士といった登記を専門としている人にとっても行方不明の相続人がいる相続登記は易しくはありません。
なかには依頼者にあきらめるように促したり、受任しても放置してしまう人もいるらしいです。
家庭裁判所に申し立てたり、期間満了を待つ必要があったりと手間がかかるものではあります。
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