成年後見制度とは? わかりやすく簡単に解説します。
saitou
最新記事 by saitou (全て見る)
- 相続登記等の申請義務化関係(通達) - 2023年11月2日
- 所在等不明者共有者との共有に関する通達 - 2023年10月31日
- 法務省民二第538号 令和5年3月28日 - 2023年10月31日
近年、日本は高齢化社会をむかえ、認知症などで判断能力が下がり、勧められるままに高額な商品を購入してしまったという被害も増えています。
こういった被害から判断能力が低下した人たちを守るために後見制度の意義があります。
ここでは、成年後見制度とは、法定後見制度と任意後見制度のちがい、後見人にできることとできないことなどをわかりやすく簡単に解説しています。
成年後見制度とは
成年後見制度といっても、大きくわけて法定後見制度と任意後見制度があり、
さらに法定後見制度には、後見、保佐、補助という3つの類型があり、どの類型を利用するかは保護される人の判断能力の度合いによってかわってきます。
法定後見制度
「法定」と書いてあるとおり、法律で定めた後見制度です。
後見制度によって守られる人のことを被後見人(あるいは被保佐人、被補助人)といい、守る側の人を後見人(保佐人、補助人)といいますが、
家庭裁判所が後見人などを選任します。
ですから、「この人に後見人になってもらいたい」と家庭裁判所に申し立てることはできますが、必ずしもその人が選任されるとはかぎりません。
後述する任意後見制度とはちがう点です。
法定後見制度には先ほど書いたように3つの類型があり、それぞれできることがちがいます。
被後見人とは
被後見人とはどのような人かは民法のつぎの条文で定義されています。
民法第7条より抜粋
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者
法律独特な言いまわしでなにを言っているかよくわからないですよね。
具体的には、認知症、精神障害、知的障害などによって日常の買い物もままならないのがあたりまえとなっている人たちのことをいってます。
後見人とは
民法第7条に当てはまる人には後見人がつきます。
後見人は被後見人に代わって、介護契約や介護施設への入所契約などの療養看護に関する法律行為をします。
そのほかにも後見人は被後見人の財産を代わりに管理します。たとえば、被後見人が不動産を持っていたら、固定資産税を被後見人の財布から代わりに支払います。
また、被後見人が高額な商品などを買わされてしまったら、その契約を取り消すことができます。
被後見人に代わって法律行為をしたり、不当な契約を取り消したりして、被後見人の財産を守るのが後見人の役目です。
被保佐人とは
同じように被保佐人も民法で定義されています。
民法第11条より抜粋
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者
被保佐人に当てはまる人は、普段は自分で買い物できたり、遺産分割協議といった大事な法律行為も誰の助けも借りずにできる人たちです。
ただ、日によっては判断能力が落ちているときがあります。判断能力が大丈夫な時とそうではない時がまだらになっているかんじです。
一応はなんでもできる人たちなので、自分のことは自分でやります。
保佐人とは
とは言っても不安なところもあるので、保佐人が被保佐人の法律行為に同意するという方法で被保佐人を守っています。
保佐人の同意のない法律行為は取り消せます。なかったことにできるのです。
保佐人が取消権をもつことで被保佐人を守ります。
しかし、法律行為のなんでもかんでもに同意をあたえるわけではありません。同意が必要なのは重要な法律行為だけです。
どれが重要な法律行為かについては民法第13条にずらずらと書いてあります。全部で9つあるのですが、
それがメニュー表みたいに書いてあります。
たとえば、相続をする、訴訟をする、不動産を買うなどです。
メニュー表に書いてあること以外でも、家庭裁判所に申し立てることで同意をあたえることができます。
また、場合によっては、保佐人が被保佐人に代わって法律行為をすることもできます。
被補助人とは
被補助人はつぎにように定義されています。
民法15条より抜粋
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者
民法第11条と民法15条を見比べてみてください。民法15条では「著しく」という文字が消えていますよね。
つまり、被補助人は被保佐人よりも障害の程度が軽い人ということになります。
補助人とは
補助人も被補助人の重要な法律行為に同意をあたえるのが役目ですが、
障害の程度が軽いですから、補助人は民法第13条のメニュー表の全部にいちいち同意を与える必要はありません。
メニュー表の中から一部だけを選んで、その一部にだけ同意をあたえます。
任意後見制度とは
家庭裁判所に後見人を選んでもらう法定後見とはちがい、被後見人となる人が自分で後見人を探してきて、その人と後見契約を結ぶのが任意後見制度です。
なにを後見するのかは法定後見と同じです。療養看護や財産の管理に関することです。
ただ、あくまでも契約は法律行為ですので、まだ判断能力があるうちに契約を結びます。
そして、実際に判断能力が低下してきたら(たとえば認知症になったとか)、後見してもらいます。
関連記事【任意後見制度とは】
任意後見制度
実は任意後見制度は普通の代理とほぼ同じと思ってもらってけっこうです。
たとえば、なにかあらそいごとがあったら、訴訟などは弁護士に代理してもらいますよね。ほかにも不動産の名義変更も司法書士に代理してもらったりします。
それと同じです。
任意後見制度は世の中によくある代理の変形バージョンなのです。
それではどこがいったい変形バージョンなのでしょうか?
違いは2点あります。
ひとつは任意後見人には任意後見監督人が必ずつくという点です。
任意後見監督人は文字通り、後見人を監督する人です。後見人がなにか悪いことをしないか見張る立場です。
任意後見監督人がついて初めて任意後見契約の効力が発生します。家庭裁判所がこの任意後見監督人を選任します。
つまり、国が少しだけ関わっているのが世の中によくある代理とのちがいです。
もうひとつは任意後見契約は公正証書で作らないといけないという点です。
公正証書とは公証役場で作成されるものです。
法定後見と任意後見の違い
国が全面的に関わっている法定後見とそうじゃない任意後見では、後見人にできることがちがってきます。
法定後見人は被後見人がした契約を取り消すことができたり、保佐人や補助人の同意のない契約を取り消したりできます。
しかし、任意後見は、あくまで世の中よくある代理と変わりませんので被後見人の法律行為を取り消すことはできません。
それじゃ「任意後見はあんまり意味ないんじゃ…」と思うかもしれませんが、そうではありません。
任意後見には法定後見にはないメリットがあります。
任意後見契約は被後見人となる人の判断能力が落ちる前に契約するので、契約の内容を細かく決めることができます。
どんな介護サービスを使うとか、不動産の売却を頼んでおくとか、自分の要望を伝えておくことができるのです。
こうしてほしいという要望が伝えられなくなってしまってから始まる法定後見にはないメリットです。
後見人にできることできないこと
さて、法定や任意に関わらず後見人は被後見人に代わってすべてを代理するということではありません。
事実行為はできない
後見人は事実行為の代理はしません。
事実行為とは、カーテンを閉めるとか部屋の掃除をするといったものです。
あくまで法律行為の代理しか後見人はしません。
ただし、たとえば介護施設の入所契約をするためにどの介護施設がいいかを調べることは事実行為にあたりますが、
法律行為(入所契約)につながることですので、こういった事実行為はします。
身分行為はできない
被後見人に代わって婚姻や養子縁組をすることもできません。
だれと結婚するかとかだれを養子にするかといったことは本人の気持ちが一番大事ですので、いくら後見人でもできません。
手術に同意することや身元保証人になること
被後見人に手術に同意してもいいのかは、議論になっているところでもあり、むずかしいところでもあるのですが、
後見人は同意できないと考えられています。
また、介護施設に入所するときに後見人が身元保証人になることを求められることもありますが、
後見人は身元保証人にはなれません。
というのも被後見人が介護施設になにか損害をあたえて、身元保証人である後見人がお金を支払って解決したとします。
そうすると後見人が被後見人にたいして払った分のお金を請求できることになります。
この場合、利益相反が成立してしまい、まずいのです。
関連記事【親子間で利益相反行為になる例は?】
まとめ
- 後見制度には法定後見と任意後見がある。
- 法定後見制度には後見、保佐、補助の3種類がある。
- 法定後見人は被後見人を代理し、取消権がある。
- 保佐、補助については同意のない契約を取り消せる。
- 任意後見だと被後見人になる人の要望をこまかくかなえることができる。
- 後見人は事実行為や身分行為はできない。
相続登記017-753-1257(平日土)900~1800
おひとりで悩まずに
お気軽にお問い合わせください。
電話 017-753-1257
(平日 土曜)9:00~18:00
メールは24時間365日対応