相続放棄と代襲相続の関係をわかりやすく解説します
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相続放棄に代襲相続が絡んで「こんなときは相続放棄できるの?」と質問されたら、専門家でもぱっと答えを出すのは難しいではないでしょうか。
そこで、相続放棄と代襲相続が関係してくる場合を事例をあげてみましたので、ご自分に当てはまる事例がありましたら、ご参考にしてください。
代襲相続の簡単な説明
相続放棄と代襲相続の関係について説明するまえに代襲相続について簡単に説明します。
代襲相続とは亡くなった人(被相続人)の子が被相続人よりも先に亡くなっていた時に被相続人の孫が代わりに相続することをいいます。
もし孫も先に亡くなっていればひ孫が代わりに相続します。
よくあるまちがいは、被相続人の子が被相続人よりも後に亡くなっているのに孫が代襲相続だと勘違いすることです。
この場合は代襲相続ではありません。(数次相続です。)
先か後かで相続人が変わってきますので注意が必要です。被相続人と被相続人の子のどちらが先に亡くなっているのかをちゃんと調べましょう。
甥姪も代襲相続することがあります
また、亡くなった人に子がおらず、両親もすで亡くなっているときは亡くなった人の兄弟姉妹が相続人になりますが、
兄弟姉妹が先に亡くなっているときも兄弟姉妹の子、つまり、亡くなっている人からみて甥姪も代襲相続することがあります。
以上が代襲相続の基本ルールです。
さらにくわしくは下記の記事を参考にしてください。
関連記事【代襲相続による相続登記とは?】
相続放棄で甥姪が代襲相続する場合
相続人には順位があり、先順位の人が相続放棄をすると後の順位の人が相続人になります。
このルールにより、先順位が相続放棄をすることで甥姪が予期せずに代襲により相続人になることがあります。
先順位の相続人が相続放棄をするということは、それなりの事情があるはずで、甥姪も相続人にはなりたくはない可能性があります。
たとえば次のようなケースがあります。
いとこが相続放棄をしたら、甥姪がおじさんの相続人になってしまうというケースです。
ただし、祖父母と両親のうち祖父母と血縁のある方ががもうすでに亡くなっている時のみになります。
このときももちろん甥姪は相続放棄を選択できます。
甥姪が相続放棄を決めたとしたら、3か月以内にその旨を家庭裁判所に届け出ないといけません。
もう少し具体的に言うと、おじさんがなくなったのを知り、なおかつ、先順位者(図の場合だといとこ)が相続放棄をしたのを甥姪が知った日から3か月以内です。
関連記事【相続放棄はいつまでに? 期間と期限がわかります!】
親の相続放棄をしても子は祖父母の代襲相続はできます
親の相続放棄をした後に祖父母を代襲して相続できるかという問題があります。
普通に考えて相続放棄をしてもはや相続人ではないのだから、祖父母の相続はできないと思うかもしれません。
しかし、結論はこの場合でも祖父母の代襲相続はできます。
なぜできるのかは民法第887条に書いてあります。
民法第887条第2項一部抜粋
被相続人の子が相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。
「被相続人の子」とは、この場合で言えば親のことです。そして、「相続権を失った」とは親が死亡(または、欠格、廃除)したということです。
つまり、この条文は親が死亡したら子が代襲相続すると書いてあります。
あくまで「子」とだけ書かれており、相続放棄をしたとしても子である事実は変わりません。
ですから、親の相続放棄をしたとしても祖父母の代襲相続はできるという理屈になるのです。
今の話を図にすると以下のようになります。
たとえば平成25年に親が亡くなった際に子が相続放棄をしても、平成30年に祖父が亡くなった時には子は相続人となることができます。
子は親を相続しても祖父母の代襲相続を放棄できます
反対に親の遺産を相続したとしても祖父母の分は相続放棄することができます。
つまり、親を相続しても相続放棄をしても祖父母の分は放棄もできるし、相続もできるというのが結論です。
理屈も同様に民法第887条2項には「子」とだけ書かれているからです。
ですから、祖父母のどちらかが亡くなったのを知った日から3か月以内に子は相続をするか、相続放棄をするかを選択することになります。
このケースを図にすると以下のようになります。
親が祖父母を相続放棄をしたら子は?
親が祖父母を相続放棄をしたら、子は祖父母を相続または相続放棄をできるでしょうか?
実はこれは代襲相続の話にはなりません。
というのも相続放棄は被相続人が亡くなった後ではないとできないからです。
ですから、親が祖父母を相続放棄をしたということはまず先に親より祖父母が亡くなっているはずです。
ということは代襲相続の要件を満たさないので子は祖父母の相続人にはなれないのです。
そもそも相続放棄という制度は祖先の負債を子孫に引き継がせないためにできた人道的な制度です。
よって、この結論は妥当だといえます。