死因贈与契約とは?遺贈とどう違う?
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自分の死後の財産を生前にどのように分けておくかは切実な問題だと思います。
どのように分けるかについては、遺言書に遺産の分配方法を書いておく、つまり、遺贈がまっさきに思いつくところですが、
ほかにも死因贈与契約という方法もあります。
ここでは死因贈与契約とは何か、遺贈とのちがい、不動産を死因贈与するときのポイントを書いています。
死因贈与契約とは
実は死因贈与契約といっても普通の贈与とほぼ変わりません。なにかの財産を「あげます。」という人とそれを「もらいます。」という人がいたら成立です。
ただ贈与に条件がついているという点で違うだけです。条件とは贈与する人(贈与者)が亡くなったら、契約が成就するという点です。
贈与する人が生きている間は贈与は行われません。まだ約束しているにすぎません。亡くなって初めて財産が実際に贈与されます。
ちなみに「あげる。」、「もらいます。」というふたりの意思がかみ合っていれば口約束でもかまいませんが、
後になってトラブルがおきないように書面しておくのが通常です。場合によっては公正証書にしておくこともあります。
また、負担付き死因贈与契約というのもあります。
たとえば「自分が亡くなったら家をあげるから、代わりに老後の世話をしてください。」といった具合になんらかの負担をもらう人(受贈者)にしょわせることをいいます。
負担付き死因贈与契約にしておけば、負担をしてもらいやすくなるメリットがあります。
似て非なる死因贈与契約と遺贈
結果的に亡くなった後に財産を譲渡するという点で、遺贈と死因贈与契約は似ています。
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ただし、遺贈はもらう人の気持ち(もらってもいいよとか、いらないとか)を無視して遺言書に書くことができますが、
反対に死因贈与契約は上げる側ともらう側の双方が納得してないといけません。
死因贈与契約の撤回は?
では財産を譲渡する方は、遺贈でも死因贈与でも気が変わったらいつでも撤回できるでしょうか。
答えは、両方ともできます。
遺言書は書き直したり、破いて捨てたりすることで遺贈を撤回できます。
死因贈与契約も、もらう側が同意しなくても撤回できます。いったん契約したにもかかわらず「あげるのやめた。」と言えるのはなんかずるい感じがしますが、
死因贈与契約には
民法554条
その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する
という規定があるために遺贈と同じように撤回できるのです。
ただし、負担付き死因贈与契約でもらう側がその負担をほぼやりきったときは撤回できないこともあります。
死因贈与契約にかかる税金
死因贈与契約も遺贈も財産が譲渡されたら、ともに相続税がかかります。死因贈与契約は贈与税ではないのでご注意ください。
ただし、死因贈与契約ではさらに税金がかかることもあります。
まず不動産が死因贈与により譲渡されたら、相続税のほかに不動産取得税もかかります。
また、不動産をもらったら登記することになりますが、このときの登録免許税(印紙代)が死因贈与契約だと割高になることがあります。
たとえば、身内(相続人)に死因贈与したケースだと、遺贈なら不動産価格の0.4%が登録免許税となりますが、
死因贈与だと2%になります。
税金が思いのほか高くなることもあるのです。
未成年者でも死因贈与契約は結べる?
たとえば孫のために財産を残してやりたいと思ったとき、孫が未成年だったら死因贈与契約を結ぶことができるでしょうか?
遺贈でしたら問題ありません。遺言書に孫に財産を遺贈すると書けばいいだけです。
遺言が無効でない限り、孫への財産の譲渡は無事行われるでしょう。
しかし、死因贈与契約はあげる人、もらう人がともに成年でなければいけません。ですから、未成年者だけでは契約を結べません。
未成年者が契約の相手方となるときは、未成年者の法定代理人(両親)が未成年者に代わって契約を結びます。
不動産を死因贈与するときのポイント
不動産の贈与(売買でも同じですが)を登記するときの大前提からお話します。
大前提とはあげる人ともらう人の両方が司法書士に委任状を渡すということです。
いちど契約を結んでも片方の委任状がなければ、贈与で所有者が変わったことを登記簿に載せることはできません。
死因贈与ですと贈与者はもうすでに亡くなっているのですから、委任状を出すことはできません。
ですから、贈与者の相続人全員が代わりに委任状を出します。
ここで問題が生じることがあります。というのも相続人のなかには死因贈与契約に反対の人もいるかもしれないからです。
ひとりでも委任状にハンコを押さないと登記申請はできません。
問題はもうひとつあります。
これは不動産にかぎったことではないのですが、死因贈与契約は贈与者が生きている間はいつでも撤回できるという問題です。
以上のふたつの問題をどのように解決すればいいでしょうか。
死因贈与契約で執行者を決める
相続人のかわりに不動産をあげる人を決めることができます。いうならば代理人ですね。この代理人を「執行者」といいます。
死因贈与契約書に「執行者は誰々とする。」と書いておけばいいです。
しかし、実は執行者を決めただけでは不十分です。というのも死因贈与契約の登記の必要書類には贈与者の印鑑証明書があり、
もし贈与者の印鑑証明書がなければ相続人の承諾書と印鑑証明書が必要になるからです。
死因贈与契約を公正証書にする
必要書類から印鑑証明書をのぞく方法があります。死因贈与契約を公正証書にしておけばいいのです。
公証人が死因贈与契約書について、偽造されたものではなく、贈与者と受贈者がまちがいなく署名したものだと証明してくれます。
ですから印鑑証明書がいらなくなります。これで相続人の関与をなくすことができます。
死因贈与契約の撤回には仮登記が有効
前述したとおり、死因贈与契約は贈与者が生きている間はいつでも撤回できます。
ですので、もらう人はいつ撤回されるかわからない不安があるわけです。しかし、不動産の死因贈与契約にはひとつの手があります。
それは死因贈与契約の仮登記をしておくことです。
不動産の所有者が変わったら本登記をして変わったことを登記簿に載せます。逆に言うと所有者が変わらないと登記簿に載せることはできません。
しかし、死因贈与契約だと贈与者が生きている間でも、つまり、所有者が変わっていなくとも登記はすることができます。
「所有者の私が死んだら、だれそれにこの不動産を贈与しますよ。」という内容を登記できるのです。
もちろん、所有者はまだ変わっていないので本登記ではなく仮登記という言い方になるのです。
正式には始期付所有権移転仮登記といいます。
漢字ばかり並んで難しそうですが、簡単にいうと贈与予約です。
ただし、仮登記をしたからといって贈与者が死因贈与契約を撤回できなくなるわけではありません。
いままでどおり撤回はできます。
しかし、撤回しても仮登記は残ったままになります。この仮登記を消すには受贈者の同意か裁判をおこすしかありません。
通常、不動産を売るには仮登記を消すことが条件になるでしょうから、仮登記があるかぎり、贈与者は安易に不動産を売れなくなります。
仮登記をしておけば万全とはいえないもののひとつの有効な手になります。
まとめ
- 死因贈与には遺贈の規定が準用されている。
- 死因贈与は贈与者の生きてる間はいつでも撤回可能。
- 相続人を関与させないようにするには執行者を決めて、公正証書にする。
- 始期付所有権移転仮登記が有効である。
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