手書き遺言書の無効にならない書き方
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手書きの遺言書は、正式には自筆証書遺言といいます。
ここでは、失敗しない自筆証書遺言の書き方について解説しています。
手書き遺言書作成の前に知ってほしい3つのこと
遺言の書き方は民法で書き方が決められています。
もし要件を満たさなかったら、せっかく書いた遺言も無効、なかったことになってしまいます。
自筆証書遺言は以下の3つの要件を満たさなければなりません。
1 原則は全文を自筆で
原則、全文を手書きで書きましょう。ほかの要件をみたしてもパソコンで作成したものは無効です。
代わりの人に書いてもらっても基本的にダメです。自分で書く必要があります。
もちろん、ビデオレターのように映像で残しても成立しません。
ただし、財産目録だけは手書きでなくても結構です。
というのも、財産の多い方は財産目録だけでも何枚にもわたります。
それを手書きとなると、労力も大変なものになるので財産目録だけはパソコンで打ち出したものでもかまいません。
パソコンで打ち出したものにも署名と押印は必要です。
2 署名、押印をする
遺言書を書き終えたら最後に自分の名前を書いて、その横にハンコを押してください。
名前は戸籍どおりに書いたほうがいいです。
たとえば、戸籍上の私の名字は「齋藤」ですが、日常生活では画数の少ない「斉藤」でとおしてます。
かりに戸籍の名前でなくても本人確認できればいいのですが、(ペンネームでも雅号でもいい。)万が一に備えて戸籍の名前が無難です。
押印は認め印でもいいんですが、実印を押したほうがいいです。
3 日付を記入する
遺言書には書いた日の日付を書いてください。
何年か前に遺言書を書いたけど、また改めて別に書いた場合は後に書いたものが有効になります。
たとえば、「A不動産とB不動産を乙子に相続させる。」という内容の遺言書を書いた後に
「B不動産は甲太郎に相続させる。」とまた別の遺言書を後日に書いたら、
A不動産は乙子に、B不動産は甲太郎に相続させることになります。
ここでいきなりですが、クイズです。
「平成28年2月吉日」は有効でしょうか?
正解は×です。日にちまで特定してください。
自筆証書遺言の見本
下記のイラストが3つの要件を満たした自筆証書遺言の見本になります。
書き間違えたら!?
遺言書を書き終えた後に間違いに気づいてしまったら、どうしましょう。
二重線を引いてその上に書き直したりしてもいいのでしょうか。
実は二重線を引いただけでは訂正と認められません。
二重線の近くにハンコを押して、さらに余白に「何字削除、何字加入、名前」と書き加えてください。
下記のイラストを参考にしてみてください。
遺言作成で注意してほしい5つのこと
遺言の成立の要件ではないのですが、「こうしたほうがいい」ポイントがあります。
1 遺言書は封筒に入れて封印しておく
だれかに書き加えられたり、改変される恐れがあります。封筒に入れて封をしておくことで、改ざんされないようにしましょう。
2 丈夫な紙に書く
遺言書は遺言者の死後に効力を発揮します。逆に言うと遺言者が死ぬまではなんの効力もないわけです。
つまり、しばらくはただの紙切れです。
汚れたり、破れやすい紙に書くのではなく、厚手の丈夫な紙質のものにかきましょう。
3 財産はしっかり特定する
遺言書への書き洩らしがないようにあらかじめどんな財産があるか調べておきましょう。
後日、遺言書には書かれていなかった財産が判明したら、思わぬトラブルのたねになりかねません。
また、財産は具体的に書いておきましょう。
たとえば自宅でしたら、「自宅は妻青森花子に相続させる。」と書くのではなく、登記簿記載どおりに
土地でしたら、
- 所在
- 地番
- 地目
- 地積
を記載しましょう。
銀行口座でしたら、銀行名、支店名、口座番号まで書きましょう。
4 遺留分に配慮する
遺留分というものが民法にはあります。遺留分とは一定の相続人に必ず残さないといけない遺産分のことをいいます。
遺言で全財産が誰かにわたってしまったら、「ほかの相続人がかわいそう」という国家の考えです。
以下の相続人にかぎり遺留分があります。
- 配偶者
- 直系卑属
- 直系尊属
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兄弟姉妹には遺留分がないのがポイントです。
ただ遺留分を超えた遺言も無効にはなりません。
しかし、相続人が遺留分侵害請求をする可能性があるので、はじめから遺留分にも配慮しておきましょう。
5 保管に注意
遺言書が紛失してしまったら、元も子もありません。遺言の存在には気づかずに遺族は遺産分割するでしょう。
また、遺産分割協議が終わって自宅の相続登記も済んだ後に遺言を発見したら、厄介です。
もういちど相続登記をしないといけなくなるかもしれません。
遺言書があることぐらいは家族に伝えておいたほうがいいでしょう。
手書きの遺言書は検認しないといけない
遺言を書いた人には関係ないのですが、遺族は気を付けないといけないことがあります。
自筆証書遺言は家庭裁判所で検認しないといけません。
検認とは、遺言書に加除訂正があるか、日付、署名があるかなどを確認することをいいます。
遺言書の形式、内容を明確にして、偽造や変造を防ぐわけです。
ちなみに封に入った遺言書は家庭裁判所で相続人立ち合いのもとで開封しないといけません。
勝手に見たら罰金です。
ただし、検認はあくまで遺言書を証拠として残しておくものです。遺言書の有効、無効を判定するわけではありません。
法務局に遺言書を預かってもらうと検認がいりません
令和2年の7月以降、手書きの遺言書を法務局に預けることが可能になります。
これで保管場所について考慮することもなくなりますし、されに検認も必要ありません。
手書き遺言書を書きたい人には朗報です。
自筆証書遺言のメリットとデメリット
自筆証書遺言のメリットは、簡単にいつでも書けるという点です。
しかし、デメリットもあります。
保管が適切でなく紛失したり、遺言書を確認する第三者がいないので要件が満たしておらず、無効かもしれない、という点です。
自筆証書遺言のメリット、デメリットをよく踏まえたうえで作成するのが大事になります。